初めて聞く言葉でよく分からないよ
新型コロナウイルスの収束が見えない現在。
拡大を防ぐ手段としてイギリスのボリス・ジョンソン首相が口にした集団免疫という言葉が世界で波紋を呼んでいます。
そもそも集団免疫とはどのような方法なのでしょうか?
新型コロナウイルスの拡大を食い止める有効な手段なのでしょうか?
結論から言うと、残念ながらこの方法で新型コロナウイルスの収束を期待することはできません。
実際、提唱したボリス・ジョンソン首相自身も考えを改め、発言を180度ひっくり返しています。
この記事では、集団免疫とは何なのか、1から解説しています。
今回の新型コロナウイルスには適しませんでしたが、インフルエンザなどには有効であるとも言われています。
今後のためにも、ウイルスに対する1つの考え方を知っておきましょう。
目次
集団免疫とは?
どのような考え方?
人間は免疫という機能を持っています。
その中の1つに、1度感染したウイルスには再度感染しなかったりしにくくなったりするというメカニズムがあります。
それは、体内の免疫細胞が1度侵入してきたウイルスを記憶するからです。
小さい子供の頃にB型肝炎やおたふくかぜなどのワクチン接種を行うのはこれが目的です。
簡単に言えば、力を弱めたウイルスを注射して覚えさせておくことで、将来の感染を予防しているのです。
もちろんこのような免疫の方法が、すべてのウイルスに対して有効なわけではありません。
集団免疫の考え方では、この「1度感染から回復しウイルスに対する抗体を持った人」を増やすことで、新たな感染者を減らそうとします。
図で見てみよう
例えば以下のように人が分布していたとします。
この集団の中に1人の感染者(紫)が表れました。
それをきっかけに周囲の3人(赤)もウイルスをもらってしまいました。
さらにこの人たちが新たな感染者を生み出すと、感染はどんどん拡大してしまいます。
一方最初の感染者が発生した際、近くの人の中にウイルスに対する抗体を持った人(水色)がいた場合、感染にどのような変化が表れるでしょうか?
抗体を持っていた人が自身が感染しないだけでなく、周囲への感染拡大も抑える(黄色)役割を担ったことにお気づき頂けましたか?
感染し抗体を持った人が増えることで、このように未感染の人の感染リスクが減少するというのが集団免疫の考え方なのです。
大きなリスク
ただしこの集団免疫が成り立つためには、感染から復活した人が増えることが重要になります。
従って致死率の高いウイルスに対してこの手段は使えません。
誤って実行してしまうと、集団の中で多くの死者を出す恐れがあるのです。
また、効果が表れ始めるためにどれだけの人が抗体を持つ必要があるかはそのウイルスの感染力によりますが、一定数の人の感染を前提としていることにも疑問を持たれたのではないでしょうか?
新型コロナウイルスには適さない
インフルエンザには有効
集団免疫自体、間違った方法ではありません。
実際、先ほど挙げたようにB型肝炎やおたふくかぜなどの一部の病気に対して日本でも実行しています。
またインフルエンザの流行する時期になると予防接種が促されますよね。
予防接種を受けることで、万が一ウイルスにかかっても周囲への感染を最小限に抑えることができます。
そして1度感染した自身が未感染者への壁となり、感染拡大を防ぐのに一役買うことになります。
ここで重要なのが、インフルエンザには感染しても死亡する可能性は低いということです。
ウイルスを記憶して復活することで、この集団免疫の理論は成立しているからです。
新型コロナウイルスとインフルエンザの決定的な違い
一方で新型コロナウイルスの場合はどうでしょうか?
死亡率が低いとは言えませんね。
重症化してしまう人が多くいらっしゃいます。
このような状況では、集団免疫を行うことは適切であるとは言えません。
効果よりもリスクの方が大きすぎるからです。
もしウイルスに対して集団免疫の手段を実施するならば、以下の2点について確認する必要があります。
1つ目はウイルスの強さ、すなわち重症者や死亡者が多く発生するか否か。
2つ目はそのウイルスに対するワクチンがあるか否か。
どちらも、先ほど図で水色で表していた、感染拡大を抑制してくれる人の増加に繋がるかどうか、というところに焦点が当てられています。
もし実行してしまうと?
新型コロナウイルスの場合、ウイルスの感染力から考えると、集団全体のうち約60%の人が感染した時点で水色の人たちの壁の力の方が勝ち、収束すると言われています。
多くの国では学校を休校にしたりイベントを中止にしたりという対策を取っていることで非日常な日々が続いていますが、全体の60%の人が感染するような事態になれば、社会は別の意味で混乱に陥ります。
病院のベッドは有限です。
診察する医師も有限です。
患者の受け入れオーバーで医療機関は崩壊してしまうことでしょう。
さらに多くの死者が本当に発生してしまったらどうするのでしょうか?
感染拡大を食い止めるため、今重要なこと
経済を混乱させない
客が大幅に減少していることで経営が困難な方々も多くいらっしゃいます。
実は経済を混乱させないということはとても重要です。
経済を混乱させないとは、言い換えれば国民を不安にさせないということです。
多くの人々が混乱に陥れば、想定外が現実になることもあり得るかもしれません。
例えば将来への不安から自殺者が増えるかもしれません。
その方がより経済の損失は大きくなってしまいそうです。
クラスター防ぐ
新型コロナウイルスの場合、その感染には特徴があるようです。
それは、感染者の多くはそれほど周囲へ感染を広めていないが、たまに一気に周囲へ感染させている人がいるということです。
つまりこの大規模感染を防ぐことができれば、ウイルスを収束に向かわせることができるのではないかと言われているのです。
これがよくテレビで言われているクラスターを防ぐということに該当します。
もちろんどの人が感染を拡大させているかなんて後にならなければ分かりません。
ですから感染の疑いのある場合には他人に近づかず医療機関を受診する。
その他の方は大人数の集まる場所や換気の悪い室内、他人との近距離の接触の機会をできる限り減らすことが重要になります。
自身の免疫力を高めることも効果的ですね。
拡大を遅らせる
最後に、これは個人ができることではありませんが、ウイルスの拡大を遅らせるということが重要です。
学校の休校などが該当します。
防ぐのではなく遅らせるのに何の意味があるのかと疑問を持たれた方もいらっしゃるかもしれません。
これには主に2つの役割があります。
1つは爆発的に感染者が増えないように、感染者がいても少しずつとなるようにすることで、医療機関の崩壊を防ぐという狙いです。
また今後患者が増加する予測ができていれば、準備も行えます。
もう1つは医療の発達を期待できるということです。
つまり感染を遅らせている間に、頑張ってワクチンや薬を開発してくださいと願っているのです。
また謎のウイルスの急速な拡大は人々を不安にさせますから、ウイルスに対する知識や精神面での余裕を持たせる面でも、感染を遅らせることには意味があるかもしれませんね。
まとめ
まだまだ不安な日々が続きそうですが、基本的な対策は全てテレビなどのメディアが言ってくれている通りです。
日本は正しい対処法を実行してくれているので、極度の心配は必要ありません。
非日常が続いていることで体力面でも精神面でも弱っている方が増加することの方が心配です。
新型コロナウイルスにも打ち勝てる?!ような健康的な生活を心がけましょう。